再生可能エネルギーを取り巻く環境の変化

(一身上の都合により?ブログタイトルを変えました。)

 ここまで、ややまとまりに欠くが、現在再生可能エネルギーと呼ばれるもののうち、自然エネルギーを電気エネルギーに変換する方法について述べてきた。
 正直に言って、ここまで書いてきた事のほとんどは、すでに言い古されたものである。

 1979年3月、アメリカにおいて発生した、スリーマイル島原子力発電所炉心溶融事故(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%AB%E5%B3%B6%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80%E4%BA%8B%E6%95%85)の影響で、反、脱原子力の機運が世界的に盛り上がり、1980年には、スウェーデンが、その時点で保有していた原子炉12基の2010年までの廃止を決定するなど、脱原発の動きが強まったこと受け、80年代に、「ソフト・エネルギー・パス」という言葉で表現された、自然エネルギー利用の考え方の範疇を出ない。

 その後も、1986年の、旧ソ連(現在のウクライナにある)の、チェルノブイリ原子力発電所の爆発事故(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AB%E3%83%8E%E3%83%96%E3%82%A4%E3%83%AA%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80%E4%BA%8B%E6%95%85)が発生し、反原子力運動が世界的に盛り上がりを見せたものの、それ以降は、原子力発電所の安全運転の実績が積み上げられ、反原子力の運動も下火となっていった。

 スウェーデンの「脱原発」政策も、昨年、明確に見なおされ、原発の新規建設を含め、脱・脱原発に舵を切ったのは、象徴的出来事であろう。
http://jp.ibtimes.com/article/biznews/090206/28582.html

 確かに、チェルノブイリ事故以来、原発の安全性は、その運用方法を含めて徹底的に見なおされ、ヒューマンエラーの抑止などの新しい概念の安全対策なども十分に施されるようになり、上記2つの事故に匹敵するような大事故は、その後世界で発生していない。
 昨今の、地球温暖化に関する、二酸化炭素温暖化仮説に基づく、二酸化炭素排出への国際的削減の取り組みは、一方で発電時に二酸化炭素を出さない、原子力発電推進・拡大のインセンティブにもなっている。

 また、化石燃料が、あと100年は持たないのは確実であるが、ウラン燃料資源は、まだ数百年はもつものと仮定されており、その間に、核融合発電技術の確立がなされることを見込むのが、日本を含む多くの先進国のエネルギー政策である。

 この状況の中で、一時は脚光を浴びた自然エネルギー再生可能エネルギー)の開発は、自然エネルギーの固有の問題点(エネルギー密度の薄さ、不安定さ、コストの高さ)が、容易に解決されず、既存の技術である、水力、火力、原子力発電に、電気エネルギー供給の主役を握られたままになっている。

 しかし、最近になって、再生可能エネルギーを巡り、多少の環境の変化が生じてきた。

 まず、第一に、新興工業国(BRICs=ブラジル、ロシア、インド、中国)と、それに続く、発展途上国の急激な工業化及び生活レベルの向上に伴い、すぐに手に入る、化石燃料の消費がいちぢるしく増えてきていることである。
 この事実は、化石燃料の、可採年数がどんどん短くなって行くことと、その消費に伴う二酸化炭素の排出増の問題を生じさせ、原子力技術を保有する先進国と、そうではない新興工業国(旧ソ連のロシアは、独自の原子力技術を持っていたが<黒鉛減速型原子炉>、チェルノブイリ事故以降、この形式の炉は省みられなくなっており、ロシア自身も、新規建設の原発は、旧西側諸国設計の軽水炉を採用している。)との間で、二酸化炭素排出規制を巡り、激しい対立が続いている。

 また、原子炉は、その建設までに、膨大な資金と、長い期間を必要とするのに対して、化石燃料の利用はしごく簡単であり、新興工業国及びそれに続く工業化を進める諸国が、すぐに使えるエネルギー源として求めるのは、依然として石油・天然ガス・石炭なのである。

 また、もう一方で、原子力開発には、核兵器保有の問題が必ず付いて回る。
 先進国のエゴとは思うが、核保有5大国を初めとして、原子炉技術保有国は、自国以外の国が、独自の原子力技術を持ち、核兵器保有に走ることに、強い警戒感を持っている。

 ここに、先進国 Vs 新興工業国、そして、BRICsのうち、ロシア、中国、インドはすでに核兵器保有しており、さらなる核拡散に懸念を持ち、自国に続く工業化をしつつある国々の原子炉保有に神経質になっているという構図が生じているわけである。

 なお、ここで私は、二酸化炭素温暖化仮説は誤りである、という立場には立たない。
 温暖化は、ツバルなどの島国での、海水位上昇による国土の水没を見れば、その事実は疑いようの無いものであり、その原因が、二酸化炭素を含む、温暖化効果ガスによるものだという仮説は説得力を持つ。
 20世紀に入ってから、各地の氷河は後退を続けており、平均気温も、地球規模で観測が始まってから、上昇を続けている。
 温暖化仮説反対論者は、周期的におきている地球の寒冷化の時期に、今後は向かうといっているが、その根拠は何も無い。かえって、太陽黒点の活動が不活性化している昨年を見ても、すでに寒冷化に向かう条件下にありながら、依然、地球の平均気温が上昇を続けているのは、人為的な温暖化効果ガスの蓄積に原因があるといわざるを得ないものと、私は考える。

 話を戻すが、世界各国の工業化の進展と、生活水準の向上は、エネルギー多消費へと向かい、化石燃料の可採年数を縮める方向で進んでいる。
 原子力には核兵器開発の問題が付いてまわり、安易な原発の建設・輸出ができる情勢には無い。
 そして、化石燃料の消費は、二酸化炭素を初めとする、温暖化効果ガスの増加を招く。

 その結果、今、ようやく、化石燃料を代替し、かつ、核兵器開発とも無縁な、再生可能エネルギーに、光が当たるときが再び来たのである。

 おりしも、今までは、揚水式発電所の利用以外では不可能であった、電力の貯蔵が、蓄電池技術の進歩により可能になり、また、他のエネルギー源(エタノールや水素)への変換による貯蔵という道筋も見え始め、そのエタノールや水素を直接、乗り物の動力源とする方向へ、技術が進み始めた(電気自動車など)。

 この状況で、私がこれまで述べてきた、各種の再生可能エネルギーは、単にその発電量、質、密度にかかわらず、新型の蓄電池や燃料への変換、そしてスマートグリッドという思想により、小規模分散型電源もまた、採算可能なエネルギー源として見なおされることになりつつあるのである。

 また、今後も工業化や生活水準の向上が見込まれる、世界中の多くの国々で、核兵器の問題からも、二酸化炭素の問題からも自由に入手できるエネルギー源として、ハイブリッド化した再生可能エネルギーが期待を集めるだろう。

 さらに、日本においては、政権をとった民主党が、再生可能エネルギーの開発及びその技術の蓄積を、日本の新しい輸出品、または販売できるサービスとして位置づけ、新しい、日本の産業基盤として育成するという方針を打ち出している。

 私は、この政策の方向は正しいと考えている。
 化石燃料枯渇が、いつかは必ずやってくることを考えると、再生可能エネルギー利用も、今から手をつけておいても、損は無い。
 技術力で世界をリードしようと言うのは、資源の無い日本が、持続的に発展を続けるには、必要なことであろう。

 もちろん、「持続的発展」こそが至上かどうかは、国民の声にもよる。
 しかし、一部、経団連企業だけが儲けをむさぼるだけで、国民が貧困に陥りつつある今、少なくとも、OECD諸国並みの生活水準を維持するには、日本が、科学技術立国の道を歩むのは、当然のことと思う。
 ましてや、それが、環境技術、環境負荷の小さな発電技術、燃料技術であるとすれば、この地球を、子々孫々に残すのに、必要なことだと思うのである。

 明日は、少し趣を変えて、今までのエネルギー論を理解するのに必要な、エネルギーの単位系に関する記述をする予定である。

【再生可能エネルギー論】潮汐力(潮力)発電

 宮沢賢治の童話、「グスコー・ブドリの伝記」をご存じだろうか?

 彼の童話としては長編に類し、しかも、そこに出てくる理想郷「イーハトーブ」の名前は、今も有名である。

 この童話が収録されている、岩波書店刊の童話集、「銀河鉄道の夜」の表紙は、銀河鉄道をイメージした、青黒い空に列車が走っている絵だったが、表紙見返し(裏表紙側も)には、賢治自身が書いたのか、「イーハトーブ」の絵地図が載っている。

 この絵地図で、「イーハトーブ」(「岩手東部」が元と言われる)の東側は、リアス式海岸になっていて、その湾ごとに潮汐発電所が設置されていることになっている。

 賢治自身は、地質学に詳しく、教鞭をとっていたこともある。彼にすれば、化石燃料である、石油や石炭は、いずれは枯渇するものと言う知識が当時すでにあったのだろう。それに代わるエネルギー源として、「イーハトーブ」の電力は、潮汐力(潮力)発電でまかなわれているのである。

 さて、では、潮汐力発電についてであるが、これは、現在、実用化されている例も出ているので、ウィキペディアをご覧いただくのが早いだろう。

 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BD%AE%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB

 ここでは、フランスのランス潮力発電所で、1966年という昔から、24万kWの発電力を持つ設備が稼働しているそうだ。

 そのほか、現在稼働中の設備も表になって掲載されている。

 つまり、潮汐発電所(発電機)は、すでに実用化されたエネルギー源と言えるのである。
 イギリスにおける最新のデータについては、当ブログへのarankun氏のコメント(http://d.hatena.ne.jp/nemuri_neko/20100118/1263765139#c110787998)を参照願いたい。

 潮汐力発電は、何しろ原理は簡単である。

 想像していただきたい。海と陸が接している場所があるとする。

 そして、陸に、海に沿う形で(奥行きが深くても問題はない)、水をためるプールを作る。実際の地形を利用してもよい。

 海とプールはつながっていて、そこを水門で開け閉めする。

 満潮に向かう間、水門を開いておき、プールに海水をためていく。そして、満潮になると、水門を閉める。

 1日に2回ずつ、満ち潮と引き潮があるわけだが、満潮の時にためておくと、プールの水位と、干潮時の海水面に落差が生じて、その時に水門を開けば、プールから海に流れ落ちる水流で水力発電ができる。理屈の上では、一度からになったプールで、水門を閉ざし、満潮時に水門を開くと、その際には逆方向の水の流れがあり、その時も発電できる。

 満潮の時と、干潮の時。1日に2回ずつ、計4回、発電ができる理屈になる。
 通常の水力発電と同様、落差が大きく、また落ちる水量が大きいほど、発電できる電力は大きくなる。

 ただし、干満の差だけでは、さほど大きな落差は生じないし、1日に4回しか発電できないのでは、融通性に欠けることこの上ない。

 しかし、これも、以前からお話ししている通り、「ちりも積もれば山」の考え方で、採算性があるならば、設置可能な場所に、きめ細かく設置していくのが望ましいだろう。そして、運用も、以前から述べているような、ハイブリッド式の、スマートグリッドの概念や、NaS電池などを有効に組み合わせた、総体として見ていくことが大事だと思う。

【再生可能エネルギー論】「波力発電」について。

 「波力」発電。
 そのまえにそもそも論になるが、波を起こしているのは風である。
 太陽熱が起こす、大気の循環が、風であるが、その風が水面を吹きわたりそのエネルギーの一部を水面に伝えると波が起こる。吹きわたる距離が長ければ長いほど、波は大きくなる。この距離を「吹走距離」と言う。

 結局、風力も波力も太陽の光のエネルギーが変わったものにすぎないのだ。
 太陽の恵みがいかに大きいかがわかる。

 さて、風が吹きわたり波が起こる。「吹走距離」が長く取れるから、大きな波は、大洋でしか起きない。
 他方、海岸への反射により、波は相互に影響を受ける。単に風が起こす波だけが、波のすべてでは無くなる。

 「波」は、「表面波」である。
 海水浴で、比較的大きな波が来た時、サーファーや、泳ぎの得意な人が、波の下に潜るようにして、大きな波をやり過ごすのは、波のエネルギーのほとんどが、水面の水の運動であり、少し水深が下がるとその影響がほとんど無くなるからだ。

 と言うことで、「波力」の利用には、表面波である、「波」の上下動の力を利用する。
 長年研究がつづけられているが、最近実用化されているのは、「振動水柱型空気タービン方式」による、波力発電である。
 ブイのように、海面に浮かんでいる構造物に、海面とつながっており、水位が同じ水面を内部に持つ、縦に長い筒を設置する。発電の際、風車(水車では無い)を回すので、この筒は円筒形になる。

 波の上下に合わせて、波の力で、筒の内部の空気は、圧縮されたり、引っ張られたりして、筒の上部で、空気が押し出されたり吸い込まれたりする。
 この結果、筒の中には、往復する空気の流れが生じる。この空気の流れで、風力発電を行うのが、基本的原理である。
 往復する空気の流れの中でも、同一方向にしか回転しない、ウェルズ・タービンを用いている。

 何か、極めて面倒臭い方法だが、この方法による発電機で動く、浮標(航路標識のブイ)は、すでに世界中で稼働している。おもに、ブイの照明や観測機器の電源に用いられる。太陽光と違い、夜でも発電でき、海に浮いている限りは発電できるのだから、密度は薄いが、発電可能範囲は広く、時間は長い。

 この方式での波力発電の試験設備としては、「マイティホエール」(合計出力、約100kW)が、1998年7月から2002まで三重県南勢町五ヶ所湾沖合に係留設置され、(独)海洋研究開発機構(旧名:海洋科学技術センター)によって実海域実験が行われた。海水の機械室への浸入による故障で、実験は中断していたが、現在は再開しているようである。
 2003年現在、ケーソン防波堤設置式や沖合浮体式の大型のものなどが実験段階である。 荒天による損傷等、安定して運転する為には課題がある。

 海外では、2008年よりポルトガルにおいて英国製の発電機3機を用いて世界で始めて2,250kW、(約1500世帯分の電力に相当)の規模で営業運転を開始し、将来的にはさらに25機の発電機を追加し21,000Kwまで拡大する計画であったが、開始直後に中断され、2009年5月、リーマンショックのあおりを受けた、経済環境の変化もあり計画全体が無期限停止されている。

 波力発電の方法には他にも幾通りかある。
 昔は、海に浮かぶ筏のような浮体の上に、海に半分没する形での水車を設置し、波の動きをなんとか水車の回転に移動させ、それで発電しようとしていた。
 上記の円筒による方式より直接的だが、非常に複雑な動きをする波の力を、うまく水車に伝えることができず、この方式での開発はもう行われていない。

 現在は、上記の「振動水中型空気タービン方式」が、実用化されている方法だと言い切れるだろう。

 となると、あとはやはりコストの問題であり、広域で、密度は薄くても安定して発電できるようになれば、繰り返しこのブログで述べている、ハイ・ブリッド式の、複数エネルギーの効率運用システムの要素の一つとして組み込めるかもしれない。

 冬の日本海の一部や、北太平洋のように、波が激しい地域は、もちろん波力のエネルギーが強いわけだが、その分、機器の信頼度が急激に悪化する。
 そういう場所での発電は、送電の問題もあり、結局避けることになるだろう。
 他方、波の力がさほど強くないところでは発電出力が落ちる。

 適当な設置地点は、かなり難しいのかもしれない。

 しかし、これも繰り返している通り、「ちりも積もれば山」の考えに立ち、蓄電技術とも合わせ、ハイ・ブリッド方式で、少しでも再生可能エネルギーの回収に寄与すればと、思う。

 次回は、「潮力発電」、「潮汐力発電」について述べてみたい。

太陽エネルギーの効率利用と、エネルギー配分最適化社会の可能性

 これまで、数回にわたり、太陽光発電に関して話をしてきたが、太陽光・太陽熱の活用には、さまざまな方法が現実に行われ、また今後行われうる。

 太陽光発電は、主に可視光線の帯域の光を、電気エネルギーに変えるものだが、太陽光の持つエネルギーは、他にも、熱、電波、紫外線や赤外線などがあり、それらを電力に変えるだけでなく、有効に使う手段は数多くある。

 古くからあるものでは、特に東海地方や西日本の太平洋側の民家の屋根の上によく見られる、太陽光温水器である。風呂の湯を沸かすのに、太陽熱を使っている。
 これについては、解説は不要であろうが、材質、保温性、他の発熱源と結び付けての追い焚きなど、まだまだ進歩の余地があるし、家庭の浴室用だけでなく、もっと大規模な温水製造装置にして、地域冷暖房に生かす手も考えられる。

 また、同じく太陽の熱を用いて、それを鏡などで1点に集中させ、そこで水を沸騰させてタービンを回す、太陽熱発電も、最近見直され始めている。
 今から40年ほど前にも、香川県仁尾で、NEDOによる、太陽熱発電の実証実験は行われていたが、当時と今では、素材その他の技術や、価格が格段に変化している。
 さらに、今までにも述べてきたような、NaS電池による蓄電や、電気ではなく、熱水や熱媒を保温して熱エネルギーの形で蓄積しておく方法も可能になってきた。

 これらは、大規模な発電所の代替は無理ではあろうが、やはり、昨日の記事に書いたような、ある程度のエリア内で、多種多様なエネルギーを効率的に運用し、そのエリア内で消費することで、送電ロスを減らすという考えの中の要素に含まれてくるであろう。

 熱(冷)媒や、保温技術の進歩。そこから、熱エネルギーを取り出したり加えたりする、ヒートポンプ技術の進歩。蓄電、蓄熱技術の進歩。
 そういったものが、太陽のエネルギーを、太陽光発電だけでなく、多様な方法で使用することを可能にする。

 政府なり、自治体が、このような考えに基づいて、モデル・タウンを作ってみるのが良いと思う。大規模発電装置建設で儲けを出している重電メーカーや、同じく、原発を含む、大規模集約型発電を主としている電力会社には、このような新しいシステムを実現していくインセンティブが無い。

 だからこそ、国や自治体が金を出し、率先して、モデルケースを作っていくべきだと思う。
 もちろん、実際の設計は、私が今まで述べてきたような、素人の私案ではなく、専門家による、エネルギー利用の最適化を考えて作るのである。
 これらもまた、大きな設備を必要としない簡便なエネルギー源として、主にアジア・アフリカなどの、太陽光の強い地方へのユニット・小規模プラントの輸出ができ、二酸化炭素を出さずに、電力需要の伸びに応える方策として、新たな日本の産業分野として、視野に入れるべきであろう。

 以前書いたことを繰り返すが、既存の大企業の儲け至上主義だけに頼っていては、既存のシステムでいかに利益を出すかが最優先になり、しかも潤うのは一部大企業だけである。
 そうではなく、中小企業への技術拡大も考えながら、国や自治体がリードしていくべきだと考える。

 さて、話は戻るが、そもそもを言えば、風も、波も太陽のエネルギーが大気圏・水圏の中で循環しているものであり、すべては太陽からのエネルギーであるといえる。
 微妙に違うのは、潮汐力で、これは、太陽と月の重力エネルギーではあるが。

 これまでに、風力、太陽光、そして上記の太陽熱利用について述べてきた。

 次回以降は、技術的にはほぼ確立している、波力発電、潮力発電について述べていきたい。
 温度差発電については、まだ規模が小さく、原理と可能性だけを論じてみたい。

 どのエネルギー源を用いるにしろ、私の私案の肝は、NaS電池などによる、蓄電の可能性を追求することと、余剰電力による水素やバイオエタノールの製造などを基礎に、複合的エネルギーの効率的運用を目指すものである。
 その点では、再生可能エネルギーだけでなく、既存の火力発電所などで、夜間、無駄に燃やしている石油のエネルギーをも含めて、大きな意味でのエネルギーの最適化を目指すべきと言うことになる。

 大規模な原子力発電所や、火力発電所、ダム方式の大型水力発電所は、建設費が高額になり、受注するのも大企業であるし、立地場所も難しい。
 大企業は儲かるから、こういう発電所を志向する。

 しかし、私が考えるのは、その逆に、小規模分散型の各種発電装置を、できる限り簡便かつ、ユニット化することにより、製造コストを抑え、適用可能な地域を飛躍的に増やして、その地域内で完結する形で、ロスの少ない、効率的エネルギー運用を提案しているのである。

 このジャンルなら、大企業でなくても、中小企業に技術移転していけば、産業構造の新たな基盤になるであろう。競争も進み、技術開発も進むと思われる。

 繰り返しになるが、そのためにも、国や自治体が、率先して、これらのハイブリッド・エネルギー効率運用システムを率先して構築していくことが必要ではないかと考える次第である。

太陽光発電などの運用についてと、三洋電機の「ソーラーアーク」について

 太陽光発電のデメリットは、やはりその不安定さと、密度の薄さにある。
 一方、太陽光があたる場所ならば、セル(太陽光発電半導体)を貼ったパネルを設置すれば、どこででも容易に発電ができる。

 現在、太陽光発電の利用として普及が進んでいるのは、以下の3通りである。

① 新規に建設が始まっている、メガソーラー発電所

② 家屋の屋根などにパネルを設置し、各家庭への電力網に、発電した分(インバーター装置により、交流化されてから)が、逆に流し込まれる。家庭からの買い上げ金額が、先日、従来の電気料金と等価から、その倍に引き上げられた。

③ 配電線をひくにはコストがかかるような場所や、メンテナンスが面倒な場所に設置する機器の電源として、機器に直接パネルをくっつけて利用する。

 今、国策による太陽光発電の普及拡大のために、②のように、家庭で発電された電気の電力会社の買い取り価格が従来の2倍になった。
 しかし、これは政策価格であり、その分の電力会社の負担は、電気料金全体の値上げとなって、太陽光発電をしていない家庭や工場などの電気利用者の負担となる問題が指摘されている。

 ①についても、たぶんに、電力会社の環境アピールの要素が強く、太陽光発電の抱える、基本的な問題(不安定さ、密度の薄さ)を解消するものではない。

 以前の記事でも述べたが、現時点での、最高の光=電気エネルギー変換効率を達成したセルは、ドイツの研究所の41%の変換効率である。これは今後も上昇するだろうが、100%にすることは不可能と思われる。
 以前の記事では、仮にその倍の80%の変換効率になったと仮定しても、1㎡あたり、赤道付近で700W程度と試算した。
 緯度により、太陽光の入射角が変わり、単位面積当たりの発電量は減る。北緯45度程度の日本付近では、上記の数字の半分程度か?既存の最大の変換効率のセルを用いても、1㎡あたり、200Wに届くかどうかであろう。
 この数字が当たらずとも言えども遠からずであったのは、後述する、三洋電機ソーラーアークと言う、日本最大の太陽光発電システムの運用実績からわかる。

 と、ここまでは、過去の記事でも述べたことを、再検討のうえ、書いたものである。実際には、パネル表面の汚れ、悪天候による発電力低下、また、セルからパネル、パネルからインバーター装置、インバーター装置から、低圧配電線へと、途中の処理を経る際に、必ずロスが出る。
 ②や③が、パネル設置場所から、配電線または機器まで、非常に近いので何とか成立しているが、もし、何平方キロメートルもの、太陽光発電所を作ったとしても、低圧の電力線で電気を集める過程で、電気抵抗によるロスが生じ、パネルの発電力×枚数、を大きく下回る電力しか得られないであろう。

 上記の4行が、意外と知られていないし、また致命的な問題だと言うことである。
 電力は、送電電圧が高いほど、効率よく送れる。しかし、太陽光パネルで発生する電力は、電圧がごく低い。それを、家庭のような単位で、インバーターや昇圧器を設置しているから、電力線網に流すことができるようになっているのである。
 もし、ものすごく広い、太陽光発電所を作るとしても、付属機器(インバーターや昇圧器)は、かなり細かい単位で設置しなければならない。とすると、コストも上昇する。
 ということで、私は、大規模な太陽光発電所、というのは、ある程度までの広さで限界になると思う。だから、太陽光発電所に期待はしていない。

 では、どうするか?である。

 私は、地上風力や温度差発電(後日書きます)、都市の水路に設置する案がある超小規模水力発電など、考えられる再生可能エネルギーを、ある程度の範囲ごとにまとめて運用して行おく方向性を模索している。
 「チリも積もれば山」の考えに立ち、エネルギーロスが、大きくならない範囲のエリアで、そのエリア内にある再生可能エネルギーを、複合的に運用し、周辺機器を共用し、効率化を図る考え方である。
 そして、そのエリアでまとまった電力を、高い電圧で送ったり、またはそのエリア内で消費したりするという方法で、ロスを減らす方法を考えるべきだと思う。こういう考え方を実現するのが、「スマート・グリッド」の、本来的考え方である。

 どの程度のエリアで、どの程度の発電が可能か?などは、正直、場所ごとに異なるに違いない。まったく採算的に成り立たない場所もあるだろう。風力がメインとなるエリアもあれば、太陽光がメインとなる場所もあるだろう。
 これらのハイブリッド型、再生可能エネルギー運用システムを、可能な限り、平準化された機器構成による、量産効果によるコスト削減汚と、ユニット化による、小規模プラントとしての販売を検討してはどうかと思う。
 太陽光発電セルの効率、小規模風力発電の効率、その他の再生可能エネルギーの開発、が進めば、すべての場所では無理だろうが、都市でも農村でも、ある程度の発電単位が形成できると思う。

 逆に言えば、現状のままの太陽光発電、地上風力発電では、採算性と、ロスの問題から、今以上の拡大は困難ではないかと考えている。

 ここで、先に述べた、日本最大の太陽光発電設備、三洋電機の「ソーラーアーク」についてと、その運用実績から得られた情報を述べておく。
 「ソーラーアーク」は、三洋電機の技術力PRのためと、実験のために、工場敷地内に作られた、幅300m以上、高さ37mの、両端がすぼまった形の長方形をした太陽光発電パネルを敷き詰めた、南向き固定の太陽光発電設備である。
 使用されている太陽光発電セルは、同社のもので、2003年の建設時点では、変換効率が約20%のものであった。

 定格出力という言葉が適切かどうかはわからないが、計算上の最大発電能力は、6000kWである。
 しかし、ここからが面白い。
 太陽光発電セルは、それ自体が太陽光の熱を受けて温度上昇すると、変換効率が落ちることが知られている。
 一般の家庭に設置されているパネルには、まだ、その温度を下げるシステムまでは組み込まれていない。組み込むのは簡単だが、設置コスト、運用コストがかさむ。
 ソーラーアークにおいては、たまたまであったらしいが、構造物の中身が、展示室になっており、空洞であった。この結果、各セルが、裏面から熱を放射でき、温度上昇による効率低下を防げた、ということだ。
 これは今後の、「メガソーラー」発電所の建設の際に参考になるだろう。
 この結果、通常の太陽光発電設備の、「運用効率」が、定格出力の69%程度であるのに対して、80%を超える運用実績が得られた。ここでいう、運用実績とは、曇りの日などの関係で、定格出力の何%が実際に発電できるかの数字である。
 最終的な結果として、ソーラーアークでは、平均で、日中、84W/㎡の発電を達成したそうである。これは、私が試算した、数字にきわめて近く、現在最高の変換効率である、41%を用い、さらに、運用効率が80%とすると、理想的条件下で、最高の変換効率のセルを用いれば、154W÷0.8(80%の運用効率)となり、192W/㎡となる。

 また、ソーラーアークでは、幅300mの構造物の左右両端にインバーター設備を持っている。
 この点が、今日の前半で述べた、太陽光発電のネックである、広すぎると低電圧による、送電ロスが生じるので、インバーター設備を含めて、まめに設置する必要がある、と言うのを、実証してくれたわけである。

 ソーラーアークは、今後建設される予定の「メガソーラー」発電所よりも規模が大きく、出力も大きい。同じものに、より高効率のセルを付け替えれば、発電効率はさらに上がるに違いない。

 で、話が戻るが、ソーラーアークと言う、実証試験設備の運用結果から、やはり、私が述べてきたように、太陽光発電の発電密度の薄さは、どうしようもないことがわかる。一方で、遊休地に、ユニット化し、幅75m、高さ10m程度の「ミニ・ソーラーアーク」を、たくさん設置してはどうかと思う。
 構造物自体は、意外と簡単にできている。内部の展示室になっている空洞に、昇圧器や、整流器を設置して、自動運転で、送電線に電気を送る。
 固定された建物ではなく、「ソーラーアーク」の四分の一程度の大きさで、さらに、それを三分割して運搬できるようにする(1つあたりの幅が、25mになる。土台はまた別に作り、運ぶ。)。

 そして、使用しても良い遊休地に、これを、置き、地震などで倒壊しないように土台を、パイルで固定し、その上に、設備を展開する。
 大きさが四分の一であるから、発電可能な面積は、16分の1。しかし、最高効率のセルを用いれば、8分の1程度の発電ができる。
 ソーラーアークの定格出力が、6000kW。運用効率が80%以上、変換効率は、現状最大の41%とすると、この「ミニ・ソーラーアーク」は、600kWの発電が可能である。これは、一般家庭20〜25軒分に相当する。
 地方で、ある程度集住している集落の昼用電源として、また、NaS電池と組み合わせて、夜でも電気が使えるようにすれば、実用性は決して低くないと思われる。
 このユニットを、前述の、ハイブリッド型、発電機器運用ユニットの要素に組み込めれば、いろいろな場所で発電が可能になるであろう。

 太陽光発電で、日本の全エネルギーを満たすのは無理である。しかし、ハイブリッド型運用システムの一部として用いれば、実用化の可能性はあるということである。

資料収集中につき、記事遅延のお詫び

 今日は、太陽光発電の続きを書く予定でしたが、書きかけて、途中で、三洋電機本社にある、「ソーラーアーク」と言う、太陽光発電設備のことを思い出し、その諸元などを、ネットで調べている最中です。

 ほぼ、私の試算と同じような数字が出てきていますが、記事にまとめるのに、もう少し時間をください。
 明日にはアップします。

 ちなみに、三洋電機が開発している太陽光電池では、光=電気変換効率が23%になったと言う報道もありました。「ソーラーアーク」が運用開始になったのが、2003年ですから、ソーラーアークは、もう少し低い効率のセルを使っているのでしょう。

 その他、面白いこともいくつか見つけましたので、明日をご期待ください。

今後の記事の予定

 元々、再生可能エネルギーについて書いて行きたいと思いながら、時事のニュースに話がはぐれたりして、申し訳ありません。

 政治問題を語るために、今は閉鎖している、昔のブログ「陽だまり、猫だまり」(http://heiwawomamorou.seesaa.net/)の再開に向けて準備してますが、何かと多忙で。

 こちらのブログでは、時事の話題や、政治問題ではなく、落ち着いて、再生可能エネルギーや、社民主義的国民中心の政策についてなど、語っていきたいと思います。

 明日以降の予定は、太陽光発電に関する運用方法に関する記事を、1、2回続けます。
 その後、他の再生可能エネルギーとして、潮力発電、波力発電、温度差発電など、その原理と実現可能性について、書いて行きたいと思います。

 基本は、小さなものでも、少しずつ集めて、まさに「スマートグリッド」(日本的意味ではなく)で、効率を追及することを基本とします。

 では。