【再掲】新しい産業発展分野としての環境技術

(この記事は、昨年末28日から書き始めた、日本における環境技術と、再生可能エネルギー開発、およびその運用技術などを新たな産業基盤にしていこうと提唱する、連続記事の1回目です。明日、もうひとつ記事を再掲し、3日からその続きを書いて行きます。)


 さて、日本が今後目指すべき産業発展の方向性として、従来型の重厚長大、またはエレクトロニクス製品の製造業を中心とした、経済発展では、新興国の進出とともに、価格、規模の問題で、今後太刀打ちできなくなるであろうことは間違いない。(人件費、土地代等)

 日本のエレクトロニクス製品は、特に携帯電話などで「ガラパゴス化」とも言われ、日本人好みの高機能、高品位のものを、超小型にしていくという路線だけでは、今後の世界市場では、受け入れられなくなっていくであろう。多くの国の国民にとって、性能の割には安価、と言っても、日本国内で要求される水準の性能は求められておらず、ある程度必要な性能を持ち、そしてより安価な製品のほうが、今後の市場として期待される新興工業国や、それに続く発展途上国の国民には、受け入れられるであろう。

 では、日本が、今の高度の技術力を生かし、なおかつ、それらの今後の市場で、ひっぱりだこになるであろう技術は、やはり環境技術と言うほかは無い。

 新エネルギーについては、別の日にまわすとして、今日は環境(保全)技術について述べてみたい。

 日本は、昭和40年代の高度経済成長期、先行する科学の発展と製造業に対して、そのもたらす、廃棄物、汚染物質の規制には立ち遅れていた。このことは、現在の新興国にも言えると思うが。

 その結果、水俣病イタイイタイ病、喘息被害など、多くの公害が発生し、国民の健康を甚大に損なった。

 この問題は法廷に持ち込まれ、公害を引き起こした企業側は、ほとんどが敗訴し、その賠償金や、社会的信用の失墜などの罰を受ける結果となった。

 また、国としても、環境基準の強化、公害に関する研究などに、費用や人材を投じ、環境技術発展の素地が作られた。

 一部企業は、規制の無いアジア諸国に工場を移転させ、外国で公害を引き起こしたことは意外と知られていない。三菱系列の企業が、マレーシアでの放射性物質垂れ流しや、他の企業が、インドネシア水俣病と同じ種類の公害病を引き起こしたり、また、イギリスの薬品メーカーだったと思うが、インドのボパールで、爆発事故を起こし、漏れでた化学薬品のガスで、死者を含む数千名の健康被害を引き起こした。

 これらは、「公害の輸出」として、直接的な制裁とは別に、企業の信用や、その後の海外展開で支障をきたすことになり、「国の規制を守る」だけでは不十分であるという認識が生じた。

 そして、安易な廃液、ガスの垂れ流しにより、公害が顕在化してそれを補償するよりも、事前に公害が起きないように、毒性の除去や自主基準による安全性の向上などを、企業自身のイメージアップにつなげるように企業の意識も変化して来ている。

 私には知識が無いが、おそらく、アメリカ、ヨーロッパなどの先進工業国でも同様のことが積み重ねられてきて、今に至っていると思う。しかし、今の新興国の工業発展モデルは、戦後の日本のそれに酷似しており、当然、公害についても、今後(ひょっとすると今も)、直面していく問題であろう。

 新興国が、単に製造コストだけでなく、環境コストまでもが商品の価値であると気づいたとき、日本が蓄積してきた環境保全技術は、それら国に販売しうる、有力な技術となるであろう。

 また、工業技術の発展や、新製品の開発は今後も続くだろう。その過程で、今までに予想されていなかった環境負荷が生じたとき、それに対処しうる技術開発の能力も、日本が持つべきであろうと思う。

 話がずれるが、先日の、民主党の「事業仕分け」の際に、スーパーコンピューターの予算が議論となった。結果的には予算化されることになったが、あの議論で面白かったのは、一方で、「世界一じゃなきゃだめなんですか?二位じゃいけないんですか?」っという珍論にも、実は一定の真実があると思う一方、まるで、スパコン予算さえ通れば、日本の科学の進歩はOKみたいな一部エンジニアたちの暴論もまたこっけいであった。

 大事なのは、スパコンではない、そこにかける計算式を含む、基礎研究分野への投資のほうだと思う。

 ある、アメリカの企業では、ソニーのゲーム機を数千台、並列稼動させれば、計算速度でなら簡単に世界一となるという成果を発表した。スパコンの機能はそれだけではないが、機械に金をかけることが重要なのではなく、目的を達成するのに必要な金を投じるということだと思う。

 話を戻すが、環境保全技術、および今後起こりうる環境問題への対応力で、日本は、格段に優れている。たとえば、煤塵を出し、喘息を含めた公害の元になるとして敬遠され、国内の炭鉱が閉山するまでに衰微した石炭利用だが、今では、煙として排出する前に電子線を照射して煤塵に電荷を与え、それを対になる電荷の集塵機で回収するという、簡単だが、誰も予想していなかった技術により、煤塵の99.9%除去を可能にしている。

 日本全国で、石炭火力発電所が再度建設され始めたのは、この技術の寄与が大きい(ほかにもあるが)。これは、環境保全だけでなく、石炭というエネルギー源を再度、有効に使いうる道を開いたものであり、その貢献は大きい。

 新型の石炭火力発電所からでる煙は、透明、または真っ白であり、その中身は二酸化炭素と、蒸気がほとんどである。割合は違うが、比較的クリーンといわれる天然ガス火力と同じレベルにまで煤塵を除去できるようになったのである。

 しかし、テレビで見る、中国の工場の煙は、依然、黄色や、どす黒い灰色をしている。つまり、中国では、現在、日本で使われているような煤塵除去技術を使っていないのであろう。

 また、半年ほど前に見たテレビでは、中国の景勝地の海岸が、廃液により死の海になった状況が報道されていた。報道規制が大きい中国ですら、このような話が漏れてき始めている。

 環境対策をしないと、製品コストが上がらず、製品の国際競争力は高いかもしれないが、国民の健康を害することになるだろう。そして、それに気づいた国民はやがて、環境保全を求めるようになるだろう。

 その前に、環境技術コンサルタントから始まり、実際の環境保全技術の売り込み、その後のメンテナンスと考えていくと、日本の技術力は、この先、優良な商品となるであろう。

 明日は、いったん、新エネルギー開発の話に移る。しかし、新エネルギー開発もまた、環境とは切っても切れない関係にあると思うので、連続記事としてお読みいただければ幸いである。

やっと、仕事納め。でも、風邪が治りません。

熱は無いのですが、頭痛が、はげしい。寝ているのに頭痛がするって、初めての経験。 年末年始休暇の間に、悪化しませんように。