【再生可能エネルギー論】 「スマートグリッド」について

 昨日アップした、大規模洋上風力発電所のアイデアhttp://d.hatena.ne.jp/nemuri_neko/20100113/1263376627)は、必ずしも新しいものではない。
 また、蓄電池や、余剰電力で液体・気体燃料を製造するというのも、新しいアイデアではない。
 私が社会人になった四半世紀前にも、「ソフト・エネルギー・パス」という言葉で、再生可能エネルギーや水素の利用についての意見が盛んに発表された。
 私の昨日のエントリーは、昔読んだそれらに関する本と、最近の再生可能エネルギーに関する議論を結びつけ、さらに、自分が知った電力運用の知識を敷衍して組み立てたものに過ぎない。

 1日おいて読み返してみて、いくつか、より良いのでは、という小ネタがある。
 たとえば、よほど沿岸から遠い大陸棚上に、「サイト」を配置するのでない限り、電力の輸送は、蓄電池船より、海底ケーブルのほうがはるかに安く、効率的であろう。多重化することで、切断、漏電事故にも対処できる。超伝導技術の進歩による、送電線の効率アップも寄与するだろう。
 あいにく日本では、数十キロを越すような海底高圧送電線を敷設したことは無い。
 ただ、それは経験が無いだけで、有線による国際電話のための海底ケーブルのことを考えれば、技術的に困難なこととは思えない。

 送電ケーブルを陸上に上げる場所で、NaS電池などによる、出力の安定化を図り、周波数、電圧を一定にして系統につなげばよいのである。
 また、余剰電力でのバイオエタノールや水素の製造も、地上で行うほうが有利であろう。
 何しろ、バイオエタノール(私が想定しているのは第二世代のもので、原料は、木屑、紙ごみ、生ごみ、草などである。やはり食料であるとうもろこしを原料としようというのは、とうもろこしの大生産国で、穀物市場を支配するアメリカの意向が強く、世界的に見て許されることではないと思う。)の原料を運び、蓄積しなければならない。生産物であるエタノールも同様である。

 蓄電池船や、エタノール・水素製造プラント船というのも、ありうるとは思うが、運用上のコストを考えると、上記のような形が良いと思う。

 ただ、昨日のエントリーのミソは、複数の既存技術を組み合わせてでも、あのようなプランは立てられるということと、「ユニット」単位での製造、販売により、小規模から大規模まで、フレキシブルに拡大することのきる、技術・商品として考えていただければ幸いである。

 さて、話は少し変わるが、最近、「スマートグリッド」という言葉がはやり始めている。
 そもそもはグーグルが言い出したことで、IT技術を使って、各地に偏在する複数のエネルギー、またはエネルギー資源を、効率的に結びつけて、密度が低い再生可能エネルギーも取り込めるようにしようというアイデアだ。
 しかし、実はその実態は、まだはっきりしていないのである。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%89

 上記のウィキペディアの記事にあるように、国によって、「スマートグリッド」の捉え方は異なっている。別に統一する必要は無く、いろんなプランがあってしかるべきだし、電力系統網の効率化だけでなく、バイオエタノールや水素、それを消費する乗り物などについても、そのような、「効率性」の視座を持って取り組んでいくべきであろう。

 嗤うべきは、上記、ウィキペディアの記事中にある、日本の取り組みで、結局、重厚長大産業が儲けを狙って、超伝導技術や、次世代送電線網を作ろうというのに過ぎない。
 この話は、今朝のニュースにも乗り、電力会社を含め、重電メーカーが顔をそろえて、日本版スマートグリッド検討の会合が始まるそうであるが、これは、本来イメージされる「スマートグリッド」のごく一部でしかない。

 昨日の私のエントリーのような考え方が、スマートグリッドの基本的な方向性である。

 しかし、日本の産業界は、依然、原子力発電と、そこからの送電線網を次世代化すること程度しか考えていないことがわかる。
 ここら辺、目先の利益、四半期ごとの業績でしか物を考えない、最近の新自由主義的経営のあり方のため、長期的に、また、自社の得意分野を超えて、全体の効率化のために共同しようという思考に欠けているものと思われる。

 よく似た話で、10年以上前、「CALS」という、情報のIT化により、企業間横断で、紙ベースの情報のやり取りから、電子データによる情報の交換を行うシステムを作ろうという話が出てきて(そもそもは、アメリカ陸軍の戦車マニュアルが膨大すぎるので、それの電子運用化を図ったことがきっかけとなった話し)、やはり、電力会社や、ITメーカー、重電メーカーが雁首そろえて、国の掛け声で集まったが、おりからのITバブル崩壊もあり、また、メインフレーム系で、中央で全体を管理しようと発想自体が、PCなどのハードの急速な高性能化と普及により、時代遅れとなり、「CALS」概念は、一気に立ち消えした。

 スマートグリッドについても、国が、よほどきちんと手綱を取り、NEDOや大学などの公益法人などとも連携しながら、上手に進めないと、単に、古くなった設備の更新に毛の生えた程度のものになってしまうであろう。

 しかし、同じことを繰り返す、硬直した日本の大企業のおろかさには嗤うほかは無いが。

 「スマートグリッド」については、より広範で、欲得づくではない検討とプランニングが必要であろう。