太陽エネルギーの効率利用と、エネルギー配分最適化社会の可能性

 これまで、数回にわたり、太陽光発電に関して話をしてきたが、太陽光・太陽熱の活用には、さまざまな方法が現実に行われ、また今後行われうる。

 太陽光発電は、主に可視光線の帯域の光を、電気エネルギーに変えるものだが、太陽光の持つエネルギーは、他にも、熱、電波、紫外線や赤外線などがあり、それらを電力に変えるだけでなく、有効に使う手段は数多くある。

 古くからあるものでは、特に東海地方や西日本の太平洋側の民家の屋根の上によく見られる、太陽光温水器である。風呂の湯を沸かすのに、太陽熱を使っている。
 これについては、解説は不要であろうが、材質、保温性、他の発熱源と結び付けての追い焚きなど、まだまだ進歩の余地があるし、家庭の浴室用だけでなく、もっと大規模な温水製造装置にして、地域冷暖房に生かす手も考えられる。

 また、同じく太陽の熱を用いて、それを鏡などで1点に集中させ、そこで水を沸騰させてタービンを回す、太陽熱発電も、最近見直され始めている。
 今から40年ほど前にも、香川県仁尾で、NEDOによる、太陽熱発電の実証実験は行われていたが、当時と今では、素材その他の技術や、価格が格段に変化している。
 さらに、今までにも述べてきたような、NaS電池による蓄電や、電気ではなく、熱水や熱媒を保温して熱エネルギーの形で蓄積しておく方法も可能になってきた。

 これらは、大規模な発電所の代替は無理ではあろうが、やはり、昨日の記事に書いたような、ある程度のエリア内で、多種多様なエネルギーを効率的に運用し、そのエリア内で消費することで、送電ロスを減らすという考えの中の要素に含まれてくるであろう。

 熱(冷)媒や、保温技術の進歩。そこから、熱エネルギーを取り出したり加えたりする、ヒートポンプ技術の進歩。蓄電、蓄熱技術の進歩。
 そういったものが、太陽のエネルギーを、太陽光発電だけでなく、多様な方法で使用することを可能にする。

 政府なり、自治体が、このような考えに基づいて、モデル・タウンを作ってみるのが良いと思う。大規模発電装置建設で儲けを出している重電メーカーや、同じく、原発を含む、大規模集約型発電を主としている電力会社には、このような新しいシステムを実現していくインセンティブが無い。

 だからこそ、国や自治体が金を出し、率先して、モデルケースを作っていくべきだと思う。
 もちろん、実際の設計は、私が今まで述べてきたような、素人の私案ではなく、専門家による、エネルギー利用の最適化を考えて作るのである。
 これらもまた、大きな設備を必要としない簡便なエネルギー源として、主にアジア・アフリカなどの、太陽光の強い地方へのユニット・小規模プラントの輸出ができ、二酸化炭素を出さずに、電力需要の伸びに応える方策として、新たな日本の産業分野として、視野に入れるべきであろう。

 以前書いたことを繰り返すが、既存の大企業の儲け至上主義だけに頼っていては、既存のシステムでいかに利益を出すかが最優先になり、しかも潤うのは一部大企業だけである。
 そうではなく、中小企業への技術拡大も考えながら、国や自治体がリードしていくべきだと考える。

 さて、話は戻るが、そもそもを言えば、風も、波も太陽のエネルギーが大気圏・水圏の中で循環しているものであり、すべては太陽からのエネルギーであるといえる。
 微妙に違うのは、潮汐力で、これは、太陽と月の重力エネルギーではあるが。

 これまでに、風力、太陽光、そして上記の太陽熱利用について述べてきた。

 次回以降は、技術的にはほぼ確立している、波力発電、潮力発電について述べていきたい。
 温度差発電については、まだ規模が小さく、原理と可能性だけを論じてみたい。

 どのエネルギー源を用いるにしろ、私の私案の肝は、NaS電池などによる、蓄電の可能性を追求することと、余剰電力による水素やバイオエタノールの製造などを基礎に、複合的エネルギーの効率的運用を目指すものである。
 その点では、再生可能エネルギーだけでなく、既存の火力発電所などで、夜間、無駄に燃やしている石油のエネルギーをも含めて、大きな意味でのエネルギーの最適化を目指すべきと言うことになる。

 大規模な原子力発電所や、火力発電所、ダム方式の大型水力発電所は、建設費が高額になり、受注するのも大企業であるし、立地場所も難しい。
 大企業は儲かるから、こういう発電所を志向する。

 しかし、私が考えるのは、その逆に、小規模分散型の各種発電装置を、できる限り簡便かつ、ユニット化することにより、製造コストを抑え、適用可能な地域を飛躍的に増やして、その地域内で完結する形で、ロスの少ない、効率的エネルギー運用を提案しているのである。

 このジャンルなら、大企業でなくても、中小企業に技術移転していけば、産業構造の新たな基盤になるであろう。競争も進み、技術開発も進むと思われる。

 繰り返しになるが、そのためにも、国や自治体が、率先して、これらのハイブリッド・エネルギー効率運用システムを率先して構築していくことが必要ではないかと考える次第である。