【再生可能エネルギー論】「波力発電」について。

 「波力」発電。
 そのまえにそもそも論になるが、波を起こしているのは風である。
 太陽熱が起こす、大気の循環が、風であるが、その風が水面を吹きわたりそのエネルギーの一部を水面に伝えると波が起こる。吹きわたる距離が長ければ長いほど、波は大きくなる。この距離を「吹走距離」と言う。

 結局、風力も波力も太陽の光のエネルギーが変わったものにすぎないのだ。
 太陽の恵みがいかに大きいかがわかる。

 さて、風が吹きわたり波が起こる。「吹走距離」が長く取れるから、大きな波は、大洋でしか起きない。
 他方、海岸への反射により、波は相互に影響を受ける。単に風が起こす波だけが、波のすべてでは無くなる。

 「波」は、「表面波」である。
 海水浴で、比較的大きな波が来た時、サーファーや、泳ぎの得意な人が、波の下に潜るようにして、大きな波をやり過ごすのは、波のエネルギーのほとんどが、水面の水の運動であり、少し水深が下がるとその影響がほとんど無くなるからだ。

 と言うことで、「波力」の利用には、表面波である、「波」の上下動の力を利用する。
 長年研究がつづけられているが、最近実用化されているのは、「振動水柱型空気タービン方式」による、波力発電である。
 ブイのように、海面に浮かんでいる構造物に、海面とつながっており、水位が同じ水面を内部に持つ、縦に長い筒を設置する。発電の際、風車(水車では無い)を回すので、この筒は円筒形になる。

 波の上下に合わせて、波の力で、筒の内部の空気は、圧縮されたり、引っ張られたりして、筒の上部で、空気が押し出されたり吸い込まれたりする。
 この結果、筒の中には、往復する空気の流れが生じる。この空気の流れで、風力発電を行うのが、基本的原理である。
 往復する空気の流れの中でも、同一方向にしか回転しない、ウェルズ・タービンを用いている。

 何か、極めて面倒臭い方法だが、この方法による発電機で動く、浮標(航路標識のブイ)は、すでに世界中で稼働している。おもに、ブイの照明や観測機器の電源に用いられる。太陽光と違い、夜でも発電でき、海に浮いている限りは発電できるのだから、密度は薄いが、発電可能範囲は広く、時間は長い。

 この方式での波力発電の試験設備としては、「マイティホエール」(合計出力、約100kW)が、1998年7月から2002まで三重県南勢町五ヶ所湾沖合に係留設置され、(独)海洋研究開発機構(旧名:海洋科学技術センター)によって実海域実験が行われた。海水の機械室への浸入による故障で、実験は中断していたが、現在は再開しているようである。
 2003年現在、ケーソン防波堤設置式や沖合浮体式の大型のものなどが実験段階である。 荒天による損傷等、安定して運転する為には課題がある。

 海外では、2008年よりポルトガルにおいて英国製の発電機3機を用いて世界で始めて2,250kW、(約1500世帯分の電力に相当)の規模で営業運転を開始し、将来的にはさらに25機の発電機を追加し21,000Kwまで拡大する計画であったが、開始直後に中断され、2009年5月、リーマンショックのあおりを受けた、経済環境の変化もあり計画全体が無期限停止されている。

 波力発電の方法には他にも幾通りかある。
 昔は、海に浮かぶ筏のような浮体の上に、海に半分没する形での水車を設置し、波の動きをなんとか水車の回転に移動させ、それで発電しようとしていた。
 上記の円筒による方式より直接的だが、非常に複雑な動きをする波の力を、うまく水車に伝えることができず、この方式での開発はもう行われていない。

 現在は、上記の「振動水中型空気タービン方式」が、実用化されている方法だと言い切れるだろう。

 となると、あとはやはりコストの問題であり、広域で、密度は薄くても安定して発電できるようになれば、繰り返しこのブログで述べている、ハイ・ブリッド式の、複数エネルギーの効率運用システムの要素の一つとして組み込めるかもしれない。

 冬の日本海の一部や、北太平洋のように、波が激しい地域は、もちろん波力のエネルギーが強いわけだが、その分、機器の信頼度が急激に悪化する。
 そういう場所での発電は、送電の問題もあり、結局避けることになるだろう。
 他方、波の力がさほど強くないところでは発電出力が落ちる。

 適当な設置地点は、かなり難しいのかもしれない。

 しかし、これも繰り返している通り、「ちりも積もれば山」の考えに立ち、蓄電技術とも合わせ、ハイ・ブリッド方式で、少しでも再生可能エネルギーの回収に寄与すればと、思う。

 次回は、「潮力発電」、「潮汐力発電」について述べてみたい。