【再生可能エネルギー論】潮汐力(潮力)発電

 宮沢賢治の童話、「グスコー・ブドリの伝記」をご存じだろうか?

 彼の童話としては長編に類し、しかも、そこに出てくる理想郷「イーハトーブ」の名前は、今も有名である。

 この童話が収録されている、岩波書店刊の童話集、「銀河鉄道の夜」の表紙は、銀河鉄道をイメージした、青黒い空に列車が走っている絵だったが、表紙見返し(裏表紙側も)には、賢治自身が書いたのか、「イーハトーブ」の絵地図が載っている。

 この絵地図で、「イーハトーブ」(「岩手東部」が元と言われる)の東側は、リアス式海岸になっていて、その湾ごとに潮汐発電所が設置されていることになっている。

 賢治自身は、地質学に詳しく、教鞭をとっていたこともある。彼にすれば、化石燃料である、石油や石炭は、いずれは枯渇するものと言う知識が当時すでにあったのだろう。それに代わるエネルギー源として、「イーハトーブ」の電力は、潮汐力(潮力)発電でまかなわれているのである。

 さて、では、潮汐力発電についてであるが、これは、現在、実用化されている例も出ているので、ウィキペディアをご覧いただくのが早いだろう。

 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BD%AE%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB

 ここでは、フランスのランス潮力発電所で、1966年という昔から、24万kWの発電力を持つ設備が稼働しているそうだ。

 そのほか、現在稼働中の設備も表になって掲載されている。

 つまり、潮汐発電所(発電機)は、すでに実用化されたエネルギー源と言えるのである。
 イギリスにおける最新のデータについては、当ブログへのarankun氏のコメント(http://d.hatena.ne.jp/nemuri_neko/20100118/1263765139#c110787998)を参照願いたい。

 潮汐力発電は、何しろ原理は簡単である。

 想像していただきたい。海と陸が接している場所があるとする。

 そして、陸に、海に沿う形で(奥行きが深くても問題はない)、水をためるプールを作る。実際の地形を利用してもよい。

 海とプールはつながっていて、そこを水門で開け閉めする。

 満潮に向かう間、水門を開いておき、プールに海水をためていく。そして、満潮になると、水門を閉める。

 1日に2回ずつ、満ち潮と引き潮があるわけだが、満潮の時にためておくと、プールの水位と、干潮時の海水面に落差が生じて、その時に水門を開けば、プールから海に流れ落ちる水流で水力発電ができる。理屈の上では、一度からになったプールで、水門を閉ざし、満潮時に水門を開くと、その際には逆方向の水の流れがあり、その時も発電できる。

 満潮の時と、干潮の時。1日に2回ずつ、計4回、発電ができる理屈になる。
 通常の水力発電と同様、落差が大きく、また落ちる水量が大きいほど、発電できる電力は大きくなる。

 ただし、干満の差だけでは、さほど大きな落差は生じないし、1日に4回しか発電できないのでは、融通性に欠けることこの上ない。

 しかし、これも、以前からお話ししている通り、「ちりも積もれば山」の考え方で、採算性があるならば、設置可能な場所に、きめ細かく設置していくのが望ましいだろう。そして、運用も、以前から述べているような、ハイブリッド式の、スマートグリッドの概念や、NaS電池などを有効に組み合わせた、総体として見ていくことが大事だと思う。